My roots, My Story. -デザイナー 岡本大陸が語る<DAIRIKU>2024SSコレクション- vol.02
-年末お忙しいとは思うのですが、ゆっくり観たい映画はありますか?
岡本:一つに選ぶのが難しいですが…『ブライアンデパルマ』っていう監督の作品を全部観たいなとは思っています。あとは、改めて、『ゴッドファーザー』を1から3までもう一回見直したいですね。ああいういわゆるマフィア映画をいつかテーマにしてみたいなとは思ってます。
-おすすめの映画はありますか?
岡本:難しいですね(笑)。最近観た映画でいうと『アラビアのロレンス』という映画が面白かったです。すごく長い映画なんですけど、実話がもとになっている映画で、時間軸に合わせて同じ方向に映像が撮られていて、手法的にもストーリー的にも面白かったです。
ただ、自宅で観るよりかは、映画館で観る方が良さを感じることができると思います。
-当たり前ですが、映画も好みに合う/合わないがあると思いますが、大陸さんにも合わないなっていうことはあったりしますか?
岡本:もちろんありますね。面白くないなと思っちゃうと、もうそれは厳しいですよね。
でも、当たり前だなとも一方で思います。やっぱり僕たちは日本人なので、日本映画が一番わかりやすいし、共感もしやすいじゃないですか。例えばですが、アレハンドロ・ホドロフスキーさんの映画で言うと、チリの宗教や文化の話をして頂いても、どうしても難しかったりするなと思って。逆に寺山修司さんの映画とかも、海外の人からしたらそう思うと思うんですよ。
-文化の違いはどうしてもありますよね。
岡本:ただ、理解できないとかそういうことではないと思っていて。映画を観る前でも後でも良いので、題材になっている国の気候や食事、習慣、登場人物や監督の人となりなど、なんでも良いと思うんですけど、そういうものを知ることで、理解の幅は変わるなと思います。
例えば、タランティーノが『バトルロワイヤル』が好きとかそういう情報があるかないかで、楽しみ方が少し変わったりもしますよね。
-周辺知識のインプットがあるかないかで全然変わるんですね。
岡本:そうですね。そういったインプットがあると、よく理解できないけど、惹かれたりするんですよね。寺山修司さんの『田園に死す』も、『ホーリーマウンテン』から影響を受けてるみたいな話があって、それを知ると「あ、同じ撮り方してるな」とか気付けたりするんですよね。さらにそこからまた影響を受けて、エヴァンゲリオンにつながるみたいな一連の流れもあったりして。なんかこういうのって、言葉にすると難しい感じになっちゃいますけど、結構大事なことだなと思ったりします。「面白くない」の一言で切っちゃうのは勿体無いというか、自分の中で、何かひとつ見つけ出したいっていう気持ちだったり、わからないからこそもっと知りたいみたいな好奇心が生まれるのが映画の面白いところだと思います。
-難解な映画って本当にたくさんありますが、その視点は面白いですね。
岡本: 『8 1/2(はっかにぶんのいち) 』っていう映画があるんですけど、タランティーノとか、マーティン・スコセッシとか僕の好きな映画監督が全員この映画が好きなんです。初めて観た時はもう本当に全然わからなかったんですよ。でも、観てるとやっぱり惹かれるものがあって、今ではタトゥーにしちゃうくらい影響を受けているんです。
事務所に貼られた『8 1/2』のポスター
-洋画と邦画でも感じることは同じですか?
岡本:どっちがどうみたいには特にないですが、やっぱり日本人なんで、日本映画はたくさん観てもいいなと思いました。言葉遣いや方言だったり、習慣や食事、場所だったりと、日本に住んで感じたからこそ、観て感じることがあると思うので。
-大陸さんの“映画観”が少しだけ分かった気がします。ありがとうございます。
話は変わりますが、プライベートで買い物したりする時間はあるんですか?
岡本:最近ですか?あ、vintageのメガネを買いましたね。フランスの50年代のものです。
SOLAKZADEで購入したアイウェア
-アイウェアは結構頻繁に買われますか?
岡本:いや、実は初めてに近いくらいな感じですね(笑)普段、サングラスもあまりかけないくらいなんですよ。海外でめちゃくちゃ熱くて熱中症になりかけたことがあって、やっぱり機能性としても大事なんだと思ったんですけど、日本にいる時はほとんどかけないですね。
-買い物はあまりしないですか?
岡本:レコードだったり、古着だったり、、、昔からそんなに変わってないですね。
-今やSNSで服を見たり、オンラインで買い物することはどの世代にとっても当たり前で、買い物自体がすごく身近になったと思うのですが、そういった世の中の流れに対してどう感じられていますか?
岡本:基本的には良いことですよね。SNSがきっかけで、あのお店に行ってみようみたいな動機になったりもしますし。ただ、どこでもいつでも買えるっていう利点は、裏を返すとお店に行かなくても良いということにもなりかねないので…なんか、コンビニじゃないですけど、便利で必要なものがなんとなく揃うみたいなのは、ちょっと違うかなという感覚はあります。お店に行って知れるものとか、出会える人とかってやっぱりあると思います。
事務所内に綺麗に整理整頓された衣装ラック
-一長一短ですね。バランスというか。
岡本:手段が変わっただけだと思うんですよね。昔は情報がないからお店だったり、情報があるところに行くっていう形だったと思うんですよね。でも今は、SNSだったりECだったりで得た情報をより深掘ったり、実際に着てみたいと思ってお店に行ったりすると思うので、、そう考えるとあんまり変わらないのかもしれないですね。
-なるほど。映画と買い物以外でお休みの日は何されてることが多いですか?
岡本:最近ハマってるのは、もっぱらM-1ですね。2001年の第一回から連続で見るようにしています。連続で観ると、一年間で圧倒的にネタを変えられた方や、前年の審査員の言葉を受けて、少しニュアンスを変えられたりしている方などの変化に気付けるので、すごく勉強になりますね。ネタに限らず、全てに通づるものを感じます。リスペクトです。
-M-1とは、意外な返答でした。
岡本:もちろんネタを見てるんですけど、服装も面白いんですよ。スーツなのに靴だけジョージコックスだったり、なんかちょっとネクタイだけオシャレにしてるなとか。意識して見てるわけではないんですけど、やっぱ衣装には目がいきますね。
-ちなみに、どの芸人さんが好きですか?
岡本:笑い飯さんですね(笑)同郷(奈良出身)というのもあるかもしれないですね。あとは、笑い飯さんはほぼ毎年欠かさず出てるので、連続で見たことによって、より好きになった感はありますね。
-インタビューを通して、大陸さんの新しい一面を知れた気がします。
今後、ブランドとして目指していきたいゴールはありますか?
岡本:ゴールというわけではないですが、ショーや映像、ルックの撮影以外の新しい見せ方をしてみたいなとは思っています。あとは、やっぱり自分のお店を出したいですね。自分のつくった空間ありきで服を見せていきたいなと思ってます。
-ありがとうございます。楽しみです。ブランドとして伝えていきたいメッセージはありますか?
岡本:んー、難しいですね(笑)でも、ブランドのコンセプトと変わらないですね。自分の服を通して、映画だったり音楽だったり、自分の知らないものに出逢えるきっかけをつくれたらいいなと思ってます。例えば70sだったり80sだったりのカルチャーですら、おとぎ話みたいに感じるじゃないですか。どんどん新しいカルチャーも生まれてきますし。でも、そういう新しいカルチャーも過去にあったカルチャーから派生したり、MIXされて生まれてきたものだったりすると思うので、やっぱりそういった昔のカルチャーの面白さだったり、過去を調べてみてワクワクしたりとか、誰かにやらされるわけじゃなく、自分なりのペースややり方でルーツやストーリーに触れてもらえると嬉しいなと思っています。