本物を纏う価値 -visvim・SAINT Mxxxxxx・PORTER CLASSICの哲学-
年齢を重ねたからこそ分かる、“本物”を纏うという価値。
それは、流行を追うファッションではなく、自分の信念やスタイルを表現するための選択だ。
そんな大人の男性が自然と選びたくなる3つのブランドを紹介。
visvim、SAINT Mxxxxxx、PORTER CLASSIC それぞれ世界中の人々を魅了している日本のブランド。
三者三様の異なる哲学を持ちながらも、共通しているのは「拘り」と「芯の強さ」。
それぞれのブランドが持つ哲学に触れながら、着ることで感じられる“本物”を探ってみよう。
過去と現代の融合 visvimのタイムレスな美学
伝統工芸を現代のスタイルに昇華させるブランド、visvim。
デザイナー 中村ヒロキ氏が掲げる理念は「クラフトマンシップと時代性の融合」。
「普遍的な美しさ」と「後世に残っていくプロダクト作り」を追求し、デザイン、素材、パターン、生産工程まで全てを深く掘り下げたプロダクトは流行に左右されないタイムレスなデザインに。
古き良きアメリカンヴィンテージ、日本の伝統染色技術、先住民文化の要素が絶妙に混ざり合い、一着一着が物語を持っている。
特に注目したいのが、visvimを代表するアイテムの一つであるFBT。
中村ヒロキ氏が17歳の頃に出会った、数百年前にネイティブアメリカンが着用していた一足のモカシンシューズが着想源。
ネイティブアメリカンの生々しい、むきだしの力強さを保ちつつ都会でも履けるようにアップデートする。都会でも履けるということは、スニーカーソールに取り替えるという機能面だけを指したことではなく、靴としての見栄えやデイリーウェアとの相性も重視するということ。
そのために生まれたアイディアがアッパーに施された取り外し可能なフリンジ。フリンジが付いた状態でも付いていない状態でも美しいシルエットを保つために長い歳月をかけて開発された。
ネイティブアメリカンのモカシンが持つ力強さを表現するために、アッパーにはナチュラルタンニングのエルクレザーを使用。アウトソール、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)パイロンミッドソール、TPU(熱可塑性ポリウレタン)ヒールスタビライザーという現代の高性能な要素を加えたハイブリッドな仕様。
長年着用でき、美しく経年変化し、市場に支持され続ける。
FBTはまさにvisvimを体現するかのようなプロダクトだ。
デニムもvisvimが得意とするアイテムの一つ。
単なるファッションアイテムではなく、個々の生活や文化、そして歴史を反映した深い意味を持つという考えを持って開発されている。
Social Sculpture Denimは中村ヒロキ氏が14,5歳の頃、日本でヴィンテージデニムが流行る少し前に出会ったLEVI’S XXを着想源としているシリーズ。
他とは何かが大きく異なるそのデニムから感じ取れる深みのある色味、テクスチャー、独特の空気感。
強烈に惹きつけられるその答えを様々なアプローチから調べ上げ、Social Sculpture Denimに落とし込んでいる。
ヴィンテージデニムは不均一な糸で作られている。これはもちろん意図したものではなく、当時はそうした不均一な糸しか作れなかったから。ザラザラしたテクスチャーが現代の均一な糸では作り出せない空気感につながっていることからSocial Sculpture Denimでは不均一な糸を使用し、自然な色ムラや風合いを演出。
アメリカで誕生したジーンズだが、インディゴ染めはそうではない。
日本や東南アジアで伝統技法として、ジーンズが誕生する前から用いられている歴史的な染色方法だ。日本や東南アジアのヴィンテージサンプル、天然藍染の特徴からインスピレーションを得て、現代の技術と染色を活かした温もりのある生地を生み出している。
Social Sculpture Denimはカラー、糸、リベット、ボタン、2色のステッチ、本藍染の鹿革パッチ、細部に至るまで目的と意味のあるデザインが施されている。
徹底的に拘り抜いて開発されたSocial Sculpture Denimはヴィンテージの知識と膨大な開発時間をパッケージにしたモノ。
デニムは持ち主の人生をたどり、その人の個性を写し、履けば履くほど愛着が湧く。
手に取った瞬間からそのデニムの歴史が始まる。
技術とアートの共鳴が生む圧倒的な存在感
デザイナーは名だたるセレブリティを虜にし、ロサンゼルスを席巻。逆輸入的に日本でも知名度を高めたアップサイクルブランドREADY MADE/レディメイドのデザイナー・細川雄太氏と、世界のファッションシーンに絶大な影響を与えたアーティストKanye West/カニエ・ウェスト氏のマーチャンダイズを手掛けていたロサンゼルスのマルチビジュアルアーティスト・Cali Thornhill Dewitt(カリ・ソーンヒル・デウィット)氏。
圧倒的な存在感。それが、SAINT Mxxxxxxの魅力だ。
ブランド最大の特徴は本物と見間違えてしまうほどのリアルなヴィンテージ加工。ヴィンテージを徹底的に追求したプロダクトは高い技術を持った国内工場で生産の全工程が行われている。
カットソーの縫製には1960年代にアメリカのUnion Special社が開発したFLATSEAMERという特殊ミシンを使用。縫い目を平らにすることが出来るミシンを用いることで着心地を向上させることに加え、よりリアルなヴィンテージの空気感を表現。
日本屈指のヴィンテージショップであるBerBerJin/ベルベルジンとのコラボレーションも継続的に行われていることがヴィンテージ業界でも認められている加工技術ということを裏付ける。
もう一つの特徴がアーティスティックなグラフィックとワードセンス。プロダクトのベースは古着であり、ヴィンテージ市場で評価の高いアイテムからマニアックなアイテムまで、グラフィックを手掛けるCali Thornhill Dewitt氏特有の切り口でサンプリングされている。
広域なネットワークを駆使し、世界中の名だたるアーティストやブランドとのコラボレーションも精力的に行なっている。
プリントにも妥協を許さないブランドの思想が現れており、その拘りはSAINT Mxxxxxxのプリント加工のみを行う専用の工場を立ち上げるほど。それぞれのグラフィックに合わせた様々な技法を用いており、納得のいくまでサンプル制作を繰り返したのちにプロダクト化される。
徹底的なヴィンテージの追及がSAINT Mxxxxxxの持つ存在感を生み出している。
時を超える一着 PORTER CLASSICの普遍性
本当に良いモノは、時代が変わっても色褪せない。
PORTER CLASSICが生み出す服は、そのどれもが手仕事の温かさを宿し、着るほどに自分に馴染んでいくような不思議な魅力を持っている。
新品なのにどこか懐かしく、使い込むほどに体にしっくりと馴染むその感覚は、まるで長年共に過ごしてきた相棒のようだ。
「お客様、モノをつくる人、材料を考えてくれる人、そういう人たちと一緒にやらなければいいモノはできない」という創業者の吉田克幸氏の父である吉田吉藏氏の言葉から、日本の職人の技術を次世代へ継承すること、日本製に拘ること、流行に流されることなく世代を越えて愛されることがPORTER CLASSICの大切にしていること。
ブランドを代表するロールアップシャツ。シャツ好きなら名品として一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。その名の通り袖をロールアップした様相が美しく仕上がっているシャツだ。
シルエットは程よくゆとりのあるサイジングで肩肘張らずに着れるシャツ。2,3回捲って肘下あたりで抜け感のある着こなしも良し。
肘上まで捲っても袖がもたつかないように工夫されている。
美しいロールアップを実現させている剣ボロ。
着るほどに馴染む上質なコットン素材を用いており着心地は抜群。元からシワ感のある生地を使用していることから洗いざらしでの着用も可能。
縫製はドレスシャツ顔負けの細かいピッチで仕上がっている。
続いて夏の定番アイテムになりつつあるDisneyアロハシリーズ。
古い貴重なポスターアートをグラフィックに落とし込んだ芸術的な逸品。色褪せる事無く、時代を超えて今日も世界中の人々に夢と感動を届けているDisneyのキャラクター達が描かれたグラフィックは見ているだけで幸せな気持ちに包まれるようなPorter Classicらしいピースフルな仕上がりに。
トロみのある上質なレーヨン生地を使用。風に靡くほど軽い生地感、身幅は広めに取ってあり夏を快適に過ごすにはうってつけ。
大人だからこそわかる“愛着”を育む一着、それがPORTER CLASSICだ。
3つのブランドに共通しているのは、”本物”を追求する姿勢。
流行やかっこよさだけではなく、その背後にある哲学やクラフトマンシップが、自然体のスタイルを作り上げている。
visvim、SAINT Mxxxxxx、PORTER CLASSIC。どのブランドにも職人技と独自の美学が息づいている。
自分の価値観に寄り添うプロダクトを選ぶことが、流行に流されない”本物”のスタイルへと繋がる。